候補生達の円舞曲(3)>>Novel>>Starry Heaven

候補生達の円舞曲(3)

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 ダンスパーティの会場となった講堂内は、盛況だった。
 色とりどりのドレスを纏った女子候補生達は、咲き誇る大輪の花のようにあでやか。普段質素で実用一点の服を着ているだけに、新鮮な驚きと感嘆のため息を会場内の異性達に提供している。
 黒の正装に身を包んだ男子候補生達も凛々しく、生まれついての気品と品格が顕著に表れている。特定の相手に密かな思いを寄せている女子候補生にとって、これほど胸を焦がすものはないだろう。
 壇上にいる楽団が円舞曲を奏で始める。ゆっくりとした曲調に促されるように、数組の男女が中央に粛々と進み出て踊り始めた。
 その様を壁にもたれて見物しつつ、マリアはディリータとイゴール、イリアの三者が話す『昨日のあらまし』について耳を傾けていた。
「教官の狂言だったというの? ラムザが女装しなければならないという話は」
「ああ、間違いない。現にこのなかで女装している男子がいるか? 女子パートを踊っている男子がいるか?」
「…いないな」
 ディリータの言葉にイゴールが同意し、イリアも頷く。若干遅れてマリアも首を縦に振った。
「だろう? 考えてみれば当たり前のことだったよ。女装というのは騎士にとって最大の侮辱行為。候補生の名誉を傷つける行為を、アカデミーが率先して行うわけがない。いくらこのダンスパーティが無礼講であってもだ」
「じゃあ、教官はなぜラムザにドレスを着せようとしたわけ? まさか、変な趣味があるとか」
 イリアがやけに嬉しそうな声をあげる。彼女は今、裾の長いラベンダー色のドレスを纏い、左耳の上に同系色の繊細な模様があるリボンをつけている。見慣れぬその姿は、清楚で可愛らしい彼女の魅力を最大限引き立てていると言えるが、中身は普段のままらしい。
「いや、イリア。勝手に想像しているところ悪いが、そういう訳じゃないぞ」
「教官は言っていた。『あることを確かめたいから、故意にラムザを怒らせる必要がある』と。女装はそのためだろう」
 ディリータの言葉を、イゴールが引き継ぐ。
「なぁんだ。つまらないの」
「ラムザにとって女扱いされることは、最大の恥辱ともいえる行為だ。そういう観点からすると、教官のとった方法は目的にかなっていると言える」
「それで、あの賭になったという訳ね」
 複数の同意する気配。話がよくわからないマリアは、初めて口を挟んだ。
「賭って?」
「マリアが飛び出してから大変だったのよ。ラムザ、本気で怒っちゃって」
 イリアは両腕で身体を抱え込み、小さく身震いする。
 イゴールに目を向けるも、彼は右腕をさするばかりで口を開こうとしない。正装の袖口から、包帯のようなものがマリアの目にとまる。
 質問に答えてくれたのは、ディリータだった。
「剣に訴えてでも当日女装することを阻止してやる、とラムザが言い出し、教官がそれに乗ったんだ。俺とイゴールに勝ちを収め、教官から最低一本とったら女装しなくてもよいという賭を持ち出してな」
「ラムザは承諾したのね?」
「ああ、二つ返事で応じたよ。それで、裏庭でイゴールから対戦することになったんだが」
「俺は剣を交える暇さえなかった」
 イゴールがぽつりと結果を言う。マリアは眉をひそめた。
 士官アカデミー入学から剣を持ち始めたというイゴールは、彼自身も認めているようにそんなに剣技に優れているわけではない。だが、それでも、八ヶ月間みっちり修練したお陰か、今では中の上くらいまでの実力はつけている。いくらラムザの剣技が優れているからといって、一撃で叩きのめすのは容易ではないはずだ。それなのに。
 マリアは、ラムザとほぼ同等の剣技を有するディリータに目で結果を尋ねる。彼は肩をすくめて答えた。
「俺は五撃目で胴をなぎ払われ、後方に吹っ飛ばされた。満足な受け身もとれず、しばらく起きあがれなかった」
 彼の最後の言葉に引っかかったマリアは、念を押して尋ね返す。
「受け身がとれないほど吹っ飛ばされた?」
「ああ」
 重々しい表情でディリータは頷く。
 マリアのこめかみに冷たい汗が一滴流れた。
「俺とディリータがあえなく敗退すると、教官とラムザの一騎打ちになったが、何十、いや何百回剣を交えても決着がつかなかった。数時間後、双方とも疲労で動けなくなり、賭はドローとなった」
 またまた信じられないような事を、イゴールが告げる。
 彼が嘘を言うとはとても思えないが、それでも問い質さずにはいられなかった。
「教官と決着がつかなかったって、それ、本当!?」
「ああ、凄まじい剣と剣の応酬だった。剣術の試験における一位と二位の候補生の対戦よりもはるかに見応えがあった」
 遠くを見つめるような目でイゴールは言う。
「教官が得意の魔法を使えば早くに決着がついたかもしれないが、生憎と剣だけで勝負するという話だったからな。俺としては、実に勉強になったが」
 そう言うディリータの目は、白熱した競技を見た直後のように輝いていた。
 どうやらたちの悪い冗談でも、精巧な嘘でもないらしい。
 この目で見ていないので、正直信じられないが。
(そんな面白いことしているんだったら、あのあと寄宿舎へ帰るんじゃなかった!)
 マリアは心の底から悔やんだ。
「で、そのラムザは姿みせてないけど、どうしてるの?」
 イリアの言うとおり、ダンスと立食形式の食事と談笑を楽しむ候補生達の中に、見慣れた金の髪をもつ少年はいない。ディリータは小さく息を吐いた。
「賭はドローだったからな。きっと女装しなければならないと思い込んでいるんだろう。だから、パーティをサボることを選んだと思う。構内のどこかに雲隠れしているはずだ」
「彼ならそうするだろうな。変な所で真面目だから」
「真面目と言うよりは、一度決めたらてこでも動かない頑固さの現れかも」
 イゴールの言葉をイリアが修正する。どちらもあり得る、とマリアは内面で頷いた。
「俺はラムザを探してくるよ。せっかくの祭りの夜だ。あいつも心の奥底では参加したいと思っているだろうからな」
 出入り口方面へ歩き出そうとするディリータを、マリアは呼び止めた。
「あ、まって」
「なんだ?」
「もしラムザが見つかったら、『嫌なこと強いてごめん』と伝えておいてくれる?」
「ああ、わかった」
 にっこり笑顔を残して、ディリータは人混みの中に消えた。
 肩の荷が一つ下りたマリアは、微かに安堵する。
「さ〜て、わたしたちもラムザを探しに行きましょうか、イゴール」
「?」
 イリアの提案にイゴールは怪訝な表情をするが、彼女から何かを耳打ちされると理解の色が浮かべた。
「じゃ、マリアはここにいてね」
 手を振りながら立ち去ろうとする二人を、マリアは慌てて止める。
「二人とも移動するなら、私も行くわよ。一人になると、踊りたくもない人からの申込を断るのに苦労するから」
「それなら大丈夫。すぐ“マリア専属のボディガード”が来るから」
「だそうだ。ではな」
 二人は奇妙な含み笑いを残して、立ち去っていった。
 一人残された彼女は、途方に暮れる。
 外見は華やかに装っても、内面はどんどん暗い感情を湛えていく。
 話し相手がいる間は見て見ぬふりができたが、一人になると思い知らされる。寂しさが内面をさざ波のように押しては返していくのを。
 誰か友人でも捕まえればいいのだろうが、親しい人達は皆、特定のパートナーを選んで楽しいひとときを過ごしているはずだ。邪魔するわけにはいかない。かといって、今から適当な男子をパートナーに選ぶ気もおこらない。なんか、全てが億劫で面倒だった。
(イリアはここにいろと言っていたけど、気が乗らないし、帰ろうかしら)
 マリアがドレスの裾を軽くつまみ、移動しかけたときだった。
「飲むか?」
 ぶっきらぼうな声と共に、赤い液体が満たされたワイングラスを差し出される。視線を巡らすと、もう一つ肩の重荷となっている人物が立っていた。

 ◆◇◆

 講堂をでたディリータは、裏手にある中庭を足のおもむくままに歩いていた。芝生と背の高い針葉樹と防火用の貯水池とで構成されおり、鬱蒼とした雰囲気がある。それだけに人気が少ない場所であり、高い木立は寒風を防ぐ盾にもなる。また、講堂から最も近い。喧噪から逃れ身を隠すには、最適の場所と言えるだろう。
 頭上から降り注ぐ月の明かりを頼りに歩いていると、人の声がディリータの耳を刺激した。辺りをはばかるように低く抑えた、二種類の男の声。そのうち一方の声には聞き覚えがある事に思い至った彼は、興味を覚えた。耳を澄まして方角を聞き分ける。そして、足音を立てないように細心の注意を払いながら近づいていく。
 三十歩ほど歩いたところでディリータは足を止め、素早く木陰に身を隠した。数メートル先の場所−小さな貯水池の上に架けられた橋の上に、二つの人影を確認したからだ。月の光を背に受ける形となっているため、両者とも顔がよく見えない。
「で、結果はどうだったのだね?」
 左の方にいる背の低い人影が言う。しわがれているが、優しそうな声だ。ディリータは首を傾げる。ずいぶん前に、どこかで聞いたような気がしたからだ。
「三時間は剣を交えましたが、決着がつきませんでした。力、技、スピード、そして闘気。全てに於いて、彼は自分に肉薄していました」
 右にいる人物が淡々と答える。こちらは耳慣れた声だ。低くてよく通る、ジャック教官のものだ。
「ふむ。では、アミュモーネが主張する疑惑はないと考えてもよいのじゃな」
「はい」
 両者の間に沈黙が降りかかる。
 身を斬るような寒風が、橋上を吹き抜けていった。
「薬物による筋力増強とは実に面白い発想ですが、言われるこちらは甚だ迷惑です。私の教え子に、そのような姑息な手段をとる卑怯者はいません。また、そのように指導した記憶もございません。はっきり言って、そう主張されること自体…」
 熱を帯びていく声を、左の人物は片手を軽く振ることで制した。
「そなたの言いたいことはよくわかる。だが、向こうの言い分も完全に否定はできなかったのでな。一ヶ月前までぎりぎりの攻防をしていた相手が、たった一週間で急激に腕を上げ自分を打ち負かす。アミュモーネにしてみれば、悪夢そのものだったのだろうよ」
「失礼ですが、二つほど勘違いをされています」
「どういうことじゃ?」
「まず、アミュモーネの実力についてです。ここ数ヶ月、彼は基礎訓練を怠っていたとか。いくら元々の実力があっても、基礎を怠る者に技の向上などありえません。身に付いたとしても、砂上の土台に作られた城同然。いずれは崩れ去るものです。事実、今期の剣術試験の成績は急下降してました」
「耳が痛い話じゃな。担当教官のギーズには儂からよく言っておこう」
「第二に、ラムザの実力についてです。彼の腕が急激に上がったのではありません。本来の実力が顕在しただけです」
「なんじゃと?」
「この八ヶ月における実技講習中、彼と対戦した相手が怪我をすることはほとんどありませんでした。相手を傷つけないよう配慮しながら勝ちを収め、それができないときはぎりぎりの攻防をみせ、やがて力尽きたように負けていた」
 ディリータはハッとする。
 その視点を持って過去の戦闘訓練を回想すれば、頷ける点が多々あったからだ。
「ふむ。怒りという直截的な感情で枷が外れると、奥底にある実力が出る訳か?」
「はい。昨日の対戦で、私はそう確信しました。ですが、困ったことに彼自身には隠しているという自覚が全くないのです。全て無意識の行動。こちらとしては、生ぬるい優しさとも、力ある者の奢りとも、非難できません。本当に…」
 教官の声は徐々に小さくなり、最後の言葉はよく聞き取れなかった。
 だが、数歩の距離で話をしている彼らには十分な声量だったらしい。穏やかな笑い声が、辺りに流れる。ディリータは声を拾うために前へと一歩を踏み出し、そして痛恨のミスをしてしまった。
 がさっという物音が間近で響き渡る。
 橋上の二人は即座に振り返り、こちらを鋭く凝視する。
 とっさに身を隠したディリータが足元を見ると、暗くてよくわからないが雑草らしき影を踏みつけていた。
「そこにいるのは誰だ。五秒以内に姿を現さなければ、不法侵入者とみなし攻撃する」
 鋭い警告と同時に、カウントダウンが始まる。
 逃げも隠れもできないと観念したディリータは、立ち上がった。木陰からわざと足音を立てて、ゆっくりと歩く。三歩目で地面の感触が草むらから芝生へと変わった。顔を上げ、前方の橋にいる二つの人影を見遣る。
「ディリータか」
 教官はぽつりと呟き、印を結んでいた指を解いた。
 近づくことで左にいる人物をようやく見て取れたディリータは、仰天した。
「が、学長!」
「久方ぶりじゃな、ハイラルよ。いつぞやの喧嘩騒動以来か。元気かね?」
 にこやかな口調に答えざるを得ない威圧を込めて、学長が尋ねてくる。ディリータは動揺と狼狽とを胸の奥底に押し隠した。
「はい」
「ディリータ、お前こんな所で何をしている。今宵は冬至祭だぞ。唯一朝まで騒げる公式行事だぞ。可愛い女の子を捕まえにいかなくてもいいのか?」
「教官が可愛い女の子に仕立て上げようとした人物を捜しているんです。話し声がしたのでこちらにいると思ったのですが、ちがったようでした」
「あいつ、パーティに参加していないのか?」
 ディリータは首を縦に振った。
「つまらんなぁ。あの女装姿なら、さぞかし会場内が沸いただろうに」
 教官は心底残念そうに言う。
 その直後、会場は阿鼻叫喚と化すだろう、とディリータは本気で思った。
「デルソン。そなた、今回も“体を張ってパーティを盛り上げる男子候補生”を出そうとしたのか?」
「当然です。そもそも、最初にしたのは、どこのどなたでしたか?」
「はて。儂は二十五年前のことなんぞ覚えておらんぞ」
「ちゃっかり覚えているじゃありませんか」
 教官の恨みがましい視線を、学長はあさっての方角を見つめることでかわす。
 奇妙に愉快に思える沈黙が、さざ波のように流れていった。
「はっはっは。デルソンよ、細かいことを気にしていると将来禿げるぞ。もっと、おおらかな気持ちで祭りの夜を楽しむがよい」
 笑い声を上げて橋を渡り終えると、そのまま学長は振り返ることなく針葉樹が生い茂る中庭へと姿を消した。
 残されたジャック教官は、その方角に教員失格とも言える単語を吐き捨てる。
 ディリータは教官の名誉のために、聞こえぬふりをした。

◆◇◆

 何とも言えない緊迫感が両者の間に漂っていた。
「あのさ」
「あのね」
 ほぼ同時に口を開き、そして、時を同じくして二人とも口を閉ざす。
 先程から延々と、これの繰り返しだ。
 もう何回目になるか、マリアにはよくわからない。おそらく隣にいる彼もそうだろう。
 こっそりとため息を一つ吐き、左にちらりと視線を走らせる。手を伸ばせば届く距離にいる彼は、思案顔で遠くを見ていた。ランプの照り返しで横顔に陰影ができ、精悍な顔立ちを強調している。金糸をあしらった黒の礼装を纏った姿は、雄々しくも凛々しい。
 不意に、彼の視線が前から自分へと移る。
 夜空に近い瞳を向けられマリアは、俯くことで視線から逃れた。心臓がやけに高鳴り、顔が赤くなるのを感じるが、彼女には止めようがない。焦りと動揺を誤魔化すために、空のグラスを両手でゆらゆら揺らした。
 一方、アデルは、その振る舞いに当惑の色を濃くしていく。
 右にいる少女が、毎日と言ってもいいほど言葉を交わす仲間だとは認識はしている。だが、今は、外見も中身も別人のようだ。
 薔薇色のドレスを着こなし髪を結い上げた外見は、素直に綺麗だと思った。ほっそりとした体のラインが容易く手折れる野の花を連想させ、内面に複雑な感情を沸き起こさせる。また、自分と同様に何か言いたげなそぶりを見せているが、なかなか話を切り出そうとはしない。普段の彼女は快活で、言いたいことはずけずけと言うはずなのに、今は借りてきた猫のようにおとなしい。
 どうも勝手が違う。さて、どうしようか。
 それが、この奇妙な膠着状態に対する二人共通の気持ちだった。
 だが、助け船を出してくれるであろう他の仲間達は、この場にはいない。
 微妙な雰囲気を醸し出す二人の間に割って入ろうとする無遠慮な同期生も、また、いない。
 現状を打破する術を持つのは、結局、二人だけなのだ。
 テンポの緩やかな曲を耳に流し、祭りの夜を満喫する同期生達の笑顔を両目に映し、お互いに心構えをする。
 楽団が一曲分奏で終えた頃、俯いていたマリアがようやく顔を上げた。
「あのね、昨日はありがとう」
「昨日?」
「助けてくれたでしょ。不意打ちの魔法から。お礼言うの遅れてごめんなさい」
 マリアはアデルに向き合い、軽く頭を下げた。
 想定外の反応に、アデルは疑問に思う。
「怒っているんじゃないのか?」
「どうして?」
「二回も俺のこと『馬鹿』と言っていたじゃないか。俺はてっきり、何か気に障るようなことをしたのかと。実際、イリアに相談したら『アデルが悪い』の一点張りだった。イゴールはイゴールで、にやにや不気味に笑うだけだったしなぁ」
 視線を前に固定したまま、アデルはぶつぶつ言う。
 その横顔を見ているうちに、マリアはようやくある事実を認めた。
 自分は、彼の表情に、ちょっとした仕草に、紡がれる言葉に、一喜一憂していることを。
 そして、己の知識と友人の経験談から、その理由をも認めた。
 マリアの肩からすとんと重荷が下りる。
 背中に羽でも生えたかのように、体が軽く感じられる。
 心の泉は、今まで経験したことのない甘美な感情を湛えていた。
「イリアに理由を尋ねたら、『マリアに聞きなさい』というばかりでよ。やっぱり俺が悪いのか?」
 こちらを見る真っ黒な瞳には、困惑の色がありありと出ている。
 まっすぐ受け止めていると、悪戯心がもくもくと湧き起こった。

 これは、自分の心をかき乱した彼に対する、ささやかな復讐。
 そして、これから続くであろう長い戦いへの宣戦布告よ。

「そうね、あなたが悪いわね。責任はとってもらいましょうか」
「せ、責任?!」
「ええ、そうよ」
 マリアはくすくす笑いながら、狼狽するアデルの右腕を取った。
「一曲踊ってもらうわよ。精神的慰謝料代わりに、ね。」
「でぇえええええ、俺、踊れないぞ!」
「ワルツの足運びも、格闘技に通じるものがあるわよ。あなたは音楽を聴きながら私の足に合わせればいいの。さ、行くわよ」
「お、おい、別の謝罪の仕方はダメか?」
 なおも抵抗を試みる彼に対し、マリアは極上の笑顔で断言した。
「だ、め、よ。 これ以外認めないわ!」

- end -

2006.1.11

(あとがき)
 とてつもなく長いお話になってしまいました。
 リクエストもらってから完成までずいぶん時間がかかってしまい、申し訳ないです。
 フミトさんからのリクは、「オリキャラ達のアカデミー生活」というもの。
 丁度いい機会だから、マリアがアデルに淡い気持ちを抱く契機になったお話として書き上げてみました。
 面白かったと言ってもらえると、大変嬉しいです。
 最後にフミトさんへ
 2222ヒットリクエスト、ありがとうございました。
 長いお話で恐縮ですが、お気に召したら、持ち帰り下さいませ。

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