Coffee Break>>Novel>>Starry Heaven

Coffee Break

「はい」
「ありがとうございます」
 ラムザはアグリアスが差し出したカップを両手で受け取った。湯面は暗褐色で、香ばしい香りが暖かい湯気と共に立ちのぼっている。見たことがない色に、嗅いだことがない香りに、ラムザは首を傾げた。
「あの、これ何ですか?」
「コーヒーという。知らないのか?」
「はい」
「では、初体験だな。ぜひ感想を聞かせてほしい」
 そう言って、アグリアスは飲むよう促す。好奇心に輝く蒼い瞳に釣られる形で、ラムザはカップを傾けた。一口分を含み、温かい液体を舌の上に転がし、飲み込んで…、
「苦い」
 しかめっ面でそう呟くラムザに、アグリアスは小さく笑った。
「この苦みの良さが分からないとは、まだ子どもだな」
「僕はもうすぐ十八歳ですよ?」
「そうやって、年を気にする事自体が子どもの証だ。」
 不満そうに頬をふくらませる青年の反応に、アグリアスは笑みを深めた。
 最近の彼は、表情豊かになった。いいことだと思う。
 出会った頃の彼は余り表情を変えず、丁寧な口調で遠回しに他人を拒絶していた。青灰の瞳は求める物を探しあぐね、諦めて、流砂のように乾いていた。
 変化が生じたのは、いつだったか。
 いや、本来の彼に戻ったというべきなのだろうか。
 どちらにせよ…、
 アグリアスはすっと手を伸ばし、ラムザの頬に触れた。
「な、なんですか? アグリアスさん」
「笑っている顔の方がいい」
 その瞬間、ラムザの頬は火影以外の影響を受けて真っ赤に染まった。

- end -

(あとがき)
「だれか、このシーンを絵で表現してくれ!!」
 と、お願いしてもいいですか?
 というか、もう口にだして(見た目には書いて)いる。そして、引っ込める気は全くない!
 善意の申出、楽しみにまってます(←図々しい奴だ)。

追記:
 後日、イラストを二枚も頂きました。もう、幸せです。執筆していて良かったと心から思いました。
 水無月もなか様、弓月愛様。素晴らしい絵、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

↑ PAGE TOP